Family Portrait

若い女の子の迷う気持ち、自分探しの微妙な心の動きを得意とし表現してきたかわかみじゅんこさん。

ここ何年かの作風の変化。

[パリパリ伝説]の大ヒット。

子育て、パリでの仕事、家族とのつながり、いったいどんな答えが飛び出すか!?

かわかみじゅんこ節炸裂です!

 

 

「フィリップさんと私とふたりいるから、ね、いろいろと違うことを教えられるのはすごくいいなと思います」

違った意見や物の見方でこどもにいろいろなことを伝えていく。

統一した考えでこどもに接するのではない。

「ひとりの考えだと偏った考えになってしまう。

それはそれで何かが生まれたりするんですけど。

子育てに関しては違った考えを入れていった方が良いと思う。

 

 

かわかみじゅんこさんのインタビューです。

-002.Junko KAWAKAMI & Philippe CAZABAN

photo©manabu MATSUNAGA
photo©manabu MATSUNAGA

 

パリ移住の目的は”恋愛”です

元々旅行が好きでアジアなどはいろいろな国に行きました。ひとりでフランスに行ってみようと思い、ちょっとスペインのサンチャーゴ デ コンポステラ まで歩く巡礼路”カミノデサンチャーゴ”を歩きたくてそのスタート地点に向かう列車の中でフィリップさんと知り合ったんですよ。彼もその巡礼路を歩こうとしていて、メールアドレスを交換して日本に帰ってからも交流があって、そのうちフィリップさんが日本に遊びに来たり、私がまたフランスに行ったり。そして”じゃあ一緒に住もうか”ということになって、知り合って1年後にはパリに住んでいました。なので移住の理由は”恋愛”です。

パリに来て3ヶ月ぐらいでプロポーズされて、子供欲しいねという話もしていて結婚式の日取りもだいたい決まったあたりで妊娠が発覚して。結婚式の時は妊娠6ヶ月でした。


作風の変化は人間関係からではなく”歳”

私が昔書いていた漫画って、思春期の女の子が自分を捜すとかちょっと迷ったりとか援助交際してみたりとか、そういう思春期っぽいストーリーが多かったんですけど、でも、だんだんやっぱりそういう感情だわからなくなってきて、自分でもその路線は限界かな?と思っていて。そんなところにパリに住むことになり、パリの4コマ漫画がスタートして、以外にもたくさんの新しい読者の方に読んで頂けて、読者層も変化した時期でした。子供ができてとか結婚とかで作風が変わるというよりは、歳と共に変わる感じかな。

 

自分を社会に取り込む手段が欲しかった

子供ができて、恋愛とか自分のことに気持ちがむかなくなる、他にもっと大事な物ができるということだから。その昔書いていた作品って、やっぱり自分中心というか多少わがままな感情だったりするんですけど。若かったりするとそれが可愛かったり美しかったりするんですけど。子供が産まれて物事の優先順位が決まって、生きやすくなったというのはあります。自分ではなく子供が先というか、、、、。すごい迷ってたんですよね20代後半になっても。恋愛は苦手なんですが、結婚願望とか出産願望みたいのはありました。自分を社会に組み込む手段が欲しかったのかもしれません。

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日本の働くママが世界で一番の働き者

知り合いの編集者の方が”働くママのためのマニュアル本”を出版しました。それを読んでいてビックリしたのは、その中に夫の役割がないこと。こちらだとできる方がやるというか、生きていくこと全て役割分担的なニュアンスがあるとおもうのですが、ママが働いて帰って来て買い物に行って如何に短時間で栄養バランスの良い夕食を作り、、、、という、働いて家事もするママ達の負担を軽減しよう!というテーマの本なんです。”夫不在”ですね、って編集の方に言うと’まだまだそういう家庭が多い’という。日本の働くママが世界で一番がんばっていると思いました。
うちは両親が共働きだったので、やれる方がやるという家庭で育ちました。うちの母は地元で議員をしていて、父との出会いも60年代のデモ集会、という典型的な団塊の世代。私も小さい頃デモ集会に連れて行かれました。まず政治的イデオロギーがあってその上に生きている、変わった人なんですね。逆に父は料理好き、子供好きの穏やかな人。だから、男が料理してあたりまえ、時間があれば。という家庭でした。なので、フランスでのこの役割分担生活は私にとって普通かもしれません。

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子育ての軸は?
ありがとう、ごめんなさい、挨拶って大事かな。
あとは”もったいない”の精神かな? フランスの人ってご飯粒が余ったらパスタを捨てるみたいにお米も捨てるでしょ。あれがやだからお米を大事にしてほしいかな。みたくない! って思うくらいお茶碗にお米が残っていると気になる。食べ物を大事にする。ということかな。

印象に残る出来事は?
娘が3歳ぐらいの時かな、夫婦喧嘩を彼女の目の前でしてしまって。わたしが泣いてしまった時に娘が、「ママ泣いちゃった。私も泣いちゃう」って。ああーー、子どもの前で泣いちゃ行けないんだなっと思いました。

離れた日本の家族との関係は?
離れていた方が仲が良いです(笑)。でも怠け者なので親のために娘の写真を頻繁に送るとか、スカイプするとか、そういうことはほとんどしていなくて。便りが無いのは元気な証拠って事で。震災以来毎日電話していたら、逆に怪しまれました(笑)。年に1回帰る日本滞在でも3日ぐらいが限度で母とケンカになっちゃう。似てるんだと思うんですよね私と。譲れないというか、やり方が違うと直したくなるけど直されるのはイヤ。という(笑)。


習い事と日本語教育について。

年長組から水曜日にクラシック・バレエを習っています。こちらの幼稚園と学童保育が夕方までなので、疲れちゃうんじゃないかなと思うんですが、本人は楽しそうに通っています。そして、週末に日本語学校に通っています。娘は、フランス語を大人の様に上手に話せると思っていて、それと比べて日本語はつたないし、自分の伝えたいことを伝えられないというジレンマがあるみたいで、あまり使いたがらない。でも、自分の名前が書ける様になって、書けると嬉しいみたい。私はフランスに来てすぐにフランス語の学校に通たんですね、若い友達ができて、ある日何か漢字を書いていたら”書き順違う”と指摘されたんです。”書き順が違うと何かダメなの?”と聞いたら”書き順が違うと日本語じゃない”と言われて、ちょっとはずかしい思いをしました。それからはきちんとした書き順で書く漢字は大事だなと思いました。土曜の午後は用事が入る事も多く、日本語学校の後はいつもバタバタだったのですが、最近はできるだけ「何をやったの?」と訊くようにしています。そうするとやっぱりすごく嬉しそうだし、日本語への興味も前よりわいてきたような気がします。そういうことが大事なんですね。

 

 

 

かわかみじゅんこ/Junko KAWAKAMI

1973年生まれ。茨城県出身。
子供の頃より漫画家を目指す。
流しのアシスタントを経験後、1995年に角川書店よりデビュー。
2004年からパリに在住。日仏両国にて、漫画家として活動中。
近著に「日曜日はマルシェでボンボン」第2巻(集英社)から発売中。
11月に待望の「パリパリ伝説」第6巻(祥伝社)から発売予定。

photo by Matsunaga Manabu
Text by chocolatmag