Voice

-004.日本語の音

谷川俊太郎

<子どもは......>

 

子どもはなおもひとつの希望
このような屈託の時代にあっても

子どもはなおもひとつの喜び
あらゆる恐怖のただなかにさえ

子どもはなおもひとりの天使
いかなる神をも信ぜぬままに

子どもはなおも私たちの理由
生きる理由死を賭す理由

子どもはなおもひとりの子ども
石の腕の中ですら 

 

 

Tanikawa Shuntaro たにかわ しゅんたろう

詩人 /2007年2月版 1931年,東京生まれ。都立豊多摩高校卒。

1952年、第一詩集『二十億光年の孤独』出版。

以後詩、エッセー、脚本、翻訳などの分野で文筆を業として今日にいたる。

詩集に『21』『落首九十九』『ことばあそびうた』『定義』『みみを すます』『日々の地図』『はだか』『世間知ラズ』『minimal』など、エッセー集に『散文』『ひとり暮らし』、絵本に『わたし』『ともだち』『もこ  もこもこ』などがある。

谷川賢作との共演も多く、CD『クレーの天使』『家族の肖像』などが出ている。

最新刊は詩集『すき』『歌の本』『詩人の墓』『写真ノ中ノ空』『私』など。