-025.逞しく美しい野生の花たち

私は普段、デザインの仕事をしていますが、最近、改めて素晴らしいと心から感心するのが自然の生き物たちのカタチです。

ゴールデンウィークの真っ最中、犬の散歩に訪れた野生の緑が茂った荒川河畔の公園は、成長期を迎えた植物たちの力強い生命力で溢れ、その香りが熱気となって漂っていました。そんな中、近づいてよく見てみると目を見張るように美しい野生の花たちが溢れています。当たり前なのですが人間の手ではデザインできないような美しさを彼らは自然にずっと描き続けていて、恐らく人間の歴史よりもずっと古く、そして多分、毎年咲き続けています。

今回は、そんな野生の花たちのカタチや生き様について少し調べつつ、スケッチしたいと思います。

タンポポの種

 

風が吹くのを待っている種たちのとても繊細で美しい球体は本当に神秘です。

タンポポの花

この花がどうやって球体に変化することを学んだのか?!また、その花の小ささに似合わず根の長さは1mに達するものもあるらしく、実はそれほど生命力が高いらしいのです。

 


ジシバリ

 

ひまわりにとてもよく似た花。「地縛り」という名の通り、茎が地を這い、茎から根を生やし、地面を縛るように繁殖するそうです。可愛らしい花ですが逞しい生命力を持っています。

ムラサキツメクサ

四つ葉のクローバーで有名なシロツメクサに似た花。牧草としてヨーロッパから輸入されたのち全国に分布するようになったそうです。江戸時代に欧州からガラス器を船で日本に運ぶときに、割れ防止の緩衝剤としてガラスの間に詰めた花だから「詰め草」と言われているそうです。

 


ハルジオン

春によく見る可愛らしい花。1920年代に北米から観賞用として持ち込まれましたが1980年代

には除には除草剤をまいても死なない種類が出現し全国へ拡大したそうです。農作物や牧草の生育を妨害し、在来の植物を駆逐する恐れがあるため厄介な「雑草」扱いになっているそうです。

 

カタバミ

 

道端でよく見る植物です。一度根付くと絶やすことが困難であり「(家が)絶えない」に通じることから、昔から家運隆盛・子孫繁栄の縁起担ぎとして家紋の図案として用いられ「家紋」デザインの中では五大紋の一つに数えられるほどメジャーな存在だそうです。


ニワゼキショウ

 

チャーミングな色合い、と思ったら北アメリカ原産の植物でした。何かの輸入の折に混じった雑草的なものが野生化したようです。やはり生命力の強い植物です。

ナガミヒナゲシ 

 

南ヨーロッパ原産の外来種で1960年代から日本に住みついているそうです。ひとつの花房から10002000の種子をばら撒いてしまうために爆発的な繁殖力があると言われています。


こうした野生の花をスケッチしながら、少し前に読んだ「サピエンス全史」(ユヴァル・ノア・ハラリ 著)という生物学者が描いた本のことを思い出しました。人類の進化の異彩と謎と危険性を解き明かすその本の中では「ホモ・サピエンス(我々人類の生物種名)は、わずか数万年で弱小種属から地球上の生物ピラミッドの頂点に君臨してしまった。ほとんどの地球上の生物が数百年のスパンで生物的な進化を遂げてきたのに対して、人類は「道具」や「言葉」の発見を武器に過去に前例がないスピードで人工的な進化を遂げた。」といったようなことが書かれていました。逆に言うと、人類は知らず知らずの進化の中で他の生物種を絶滅に追い込んできている生物とも言えます。

ここで見た野生の花たちの中にも、農作物には邪魔になるため、人間から見て「厄介な雑草」として絶滅の対象になっているものも少なくありませんでした。しかし、そうした環境にも耐える生命力とそれぞれの生き残る方法を持ちながら、この時代にも強く生きていて、種を維持するために美しい花を咲かせています。そう思うと、美しくて可愛らしい野生の花たちがとても逞しい存在に思えてきます。

 

デザイン的な視点で眺めて見ても、とても面白いと感じます。彼らの花はなぜこんなに目立つ色合いになっているのか?花びらの繊細なカタチは受粉や種の拡散機能となっているからだろうか?あるいは、受粉の担い手である虫たちに対する目立つサインになっているのだろうか?人類の作るサイン(ネオン看板)とは異なり、受粉の季節にしか花を咲かせず、咲いた後には枯れてゆく無駄のない仕組みなどなど、本当に大きな自然の不思議を感じざるを得ません。

 

そう考えてゆくと人間がデザインするものが如何に不完全なものか?自然に学ぶことが如何に多いのか?そしてダ・ヴィンチやガウディやルコルビジュエなど様々な偉大なクリエイターたちが自然の生き物のカタチになぜ魅了されたのか?その理由が少しわかった気がしてきます。

 

今日は、荒川河畔の犬の散歩ついでに出会った、そんな身近で魅力的な野生の花たちのスケッチでした。

 

 

column by 梶谷拓生/Takusei
 KAJITANI
エクスペリエンスデザインを仕事にしてます

技術やデザインやヒトを融合して新しい体験やサービスを創りだす仕事です

サッカーをこよなく愛し、今も地元チームのミッドフィールダーとして活動中

サッカー好きな長男、音楽好きの長女を持つパパでもあります