-003.子供を預けて週末の外出はOK!? パリ流の解釈


昨年7月19日に第2子となる次男を無事、出産したMihokoです。まずは、コラムの更新が1年以上も途絶えてしまったことを、お詫び申し上げます。

 

第1子妊娠中はつわり知らず、肌の艶もすこぶる良く、快適なマタニティ•ライフを過ごした私。しかし、マタニティの症状は、妊娠の都度、異なるものなのですね。今回の第2子妊娠中は、つわりをはじめ、妊娠性の頑固な便秘や激しい胸焼け、そして妊娠初期から産後3ヶ月間の長期に渡り、夜も眠れぬ痒みをともなう皮膚炎を患うなど。正に、“マタニティのマイナー・トラブル・見本市 ”といっても過言ではない、壮絶な日々を送ってました。

さらに、妊娠後期より、長男が魔の2歳児に突入し、生後5ヶ月までは眠らないだけでなく、どうあやしても泣いてばかりいた次男にも手こずり、“あちら立てればこちらが立たぬ" その様は、まるでテレビ•ドラマ。言わば、ヒステリックな本妻と愛人とのはざまで修羅場をむかえたカサノヴァ(伊達男)!? 的な心境に至り……。“長男が泣けば、それにつられて”次男も泣く”という、阿吽の呼吸を見せる、最強の兄弟ユニット。その我が子供たちが奏でる切ないハーモニーを、元音楽ジャーナリストの私は主人に思わず、「2015年の音楽史に刻む、究極のメランコリック・ソング」と評したほど。名づけて“悲しみの二重奏”を日毎夜毎、つい先日までゲリラ・ライヴでドロップされていたため、正直、コラムを手掛ける余裕はなかった、というわけです。

さて、慌ただしい毎日はいまも続行中ですが、そんな私にも届いたのはインターネットでの道端アンジェリカ氏による「週1で子供をベビーシッターに預けて夫とデート」発言における賛否、それに関するパリ在住日本人ママさんたちのリアルな声です。家庭の掃除や料理をはじめ、子供のお着替え、オムツ替えに、手製の離乳食、そして託児所の送り迎えをも、余力があるときは手がけてくれる我が家の主人を筆頭に、いわゆる“イクメン”の旦那様を持つ奥様もめずらしくない、ここパリ。日仏夫妻には常に、日本で暮らす、という選択肢があるのだけど、その道端氏の発言に対する世論の影響も少なからずあるのでしょう。「日本へ移住したら、子供を主人に預けて、パリのように自由に遊べないことが、不安の種」と、みなさんおっしゃるんですね。

 

私自身も子供を持つまで、わからなかったことが多々ありました。それは、パリに移住した当初のこと。先輩マダムたちが子供たちのバカンス期に、お仕事の事情もあるのでしょうが、子供たちだけをご主人の実家である遠く離れた地に送り届け、その間はパリでここぞとばかりにシックな装いで夜遊びを堪能していたりするのを目の当たりにし、いつまでも女性として生きる彼女たちの姿 に憧れを抱く反面、“それで一体、大丈夫なのかしら……⁉︎”と、一抹の不満を覚えたのも事実。しかし、子供が小さい時期は、ベビーカーでの入店が難しい店舗が小さなビストロ、あるいは静寂を貴重とする星つきのレストランなどには、さすがに子連れでは行けません。また、お子様の年齢にも寄りますが、“待つ”ことに最大のストレスを抱く月齢が若い赤ちゃんを連れてのショッピング、はたまたTVの宣伝に影響されてお菓子やおもちゃを無限に欲しがる子供を連れての買い出しは、極めて困難。よって、私もたまに主人や義母に子供を預けて、用事を済ませるのは当たり前。しかも、私の義母は毎日でも孫に会いたいタイプ。私が第一子を出産した直後から、義母は「これはあなたのためになるのよ」と独自の持論を展開し、毎週末、我が家に子供をピックアップしに来ては実家へ連れて行く、というスタイルを貫く彼女に正直、当初は私もためらいましたが、長年、保育園に勤務していた義母だけに、子供の室内遊びやフランスの遊戯においてはプロフェッショナル。いまとなっては毎週末、長男みずから「マミー(おばあちゃん)とパピー(おじいちゃん)のおうちに行きたい」と、目を輝かせながらお願いしてくるように。どうやら私では到底、教えることのできない、様々なフランスの童謡を実家で覚えられることが、長男は楽しいようなのです。


また今春、子供の環境を考えて、長男が大好きな自転車で駆けめぐることのできる、アンドレ・シトロエン公園近くの15区に引っ越したのですが、ガスや電気が開通するまでは、離乳食すら作れません。したがって、子供たちを主人の実家で寝かしつけてから、フレンチ・シェフという仕事柄、深夜0時に帰宅する主人とともに新居へ向かい、翌朝の工事が終わり次第、実家に子供たちをピック・アップしに行く、といった生活をしていました。ましてや、バカンス大国のフランス。物価のみならず税金も高いここパリで、学校のバカンス期や祭日に合わせ、子連れでバカンス三昧をしようものなら、“働けど働けど我が暮らし楽にならざり”。そういった生活を経て私自身も、前述のパリの先輩マダムたちが、バカンス期に子供だけを、地方や日本の実家へ送ったり、あるいは乗馬クラブやスキーなどの子供対象の合宿スクールに参加させ、大人が楽しめる社交の場が多いパリで、時にはナイト・ライフを満喫する心境も、いよいよ理解することができてきた、というわけです。実際、子供が寝静まった夜にだけ、私もこのコラムに着手することができているのですからーー。

まだまだ新米ママの私ですが、そんな理由から上記の「日本へ移住したら、子供を主人に預けて、パリのように自由に遊べないことが、不安の種」と、日本への移住を戸惑う奥様を見掛けたら、こうアドバイスさせていただいています。「自分のライフスタイルや心境を理解してくれなさそうなママ友には、すべてを打ち明ける必要はないのでしょうか」と。答えは常にシンプル。そして、まだ訪れていない未来に対し、あれこれ不安を抱くのもナンセンス。そう自身でも改めて思えるようになったのは、やはり子供を2人持ってから。日々、予測不可能な行動をとる2人の子供とともに、1日を終えるのが精一杯。ゆえに、子育ての苦悩を誰かに嘆いたり、ため息をつく暇すらないのです。そういった日々の中で、次第に私が獲得しつつあるのは、ちょっとやそっとや動じない不動心。かつ、私自身のライフ・スタイルが、清々しいまでにシンプルになってきているのも確か。その上、兄弟でキャッキャ・キャッキャと戯れ、まるで“喜びの二重奏”のごとき歓喜に満ちたハーモニーを、息子たちが聴かせてくれる機会も増えてきた昨今。そういう意味でも、2人の子供に恵まれて良かった、と心から思っています。

 

時に、長年に渡って日本のみならず世界のクラブ・ジャズ・シーンを牽引してきた沖野修也さんが、来たる7月4日(土)、パリのOPAにて開催されるイベント“Jazz Attitudes Party ”にDJとして出演します。私が10 代の学生だった頃より、世界で名を馳せる数多のトップ・アーティストたちを、私にご紹介してくださった沖野さん。その経験を通じて、私の社交術やインタビュー・スキルが磨かれたのは言わずもがな。もはや、ジャーナリストという肩書きは説明不要なほど、フランスを代表するシンガー兼アクトレスであるシャル ロット・ゲンズブールを筆頭とした俳優、ミュージシャン、そしてアーティストやクリエイターたちからも、お声をかけていただくこともしばしば。正に、我が人生の恩師とも呼ぶべき沖野さん。その彼がパリでDJをするということで、私自身、第一子妊娠後から数えて初のソワレ(夜会)となる“Jazz Attitudes Party ”で、久々にクラブやジャズを堪能するつもりです。お時間がある方はお友達をお誘いの上、ぜひいらしてくださいね。一緒にきらびやかな一夜を過ごしましょ う。

【イベント名 】Jazz Attitudes Party Feat Michael Ruetten, Shuya Okino, Emanuela De Luca
【日程】2015年7月4日(土)
【開催時間】  OPEN / 0:00  CLOSE / 6:00
【会場】  OPA
【住所 】  9, rue Biscornet 75012 Paris
【メトロ】  Bastille ( lignes 1 / 5 / 8)
【入場料】5 ユーロ (当日、0時から1時までハッピー・アワー)
【ジャンル】クラブ・ジャズ、レア・グルーヴ、ブレイク・ビーツ、アフロ・ラテン、ディープ・ハウス
【サイト】  http://www.opa-paris.com


column by Mihoko Kaneda
長年に渡り音楽ライターとして活動してきたが、2006年に渡米
2007年より拠点をパリに移し、ライフスタイル•ファッション誌をメインにジャーナリス トとして従事した後、フランス人男性と結婚
近年は、フランスのTVドラマや映画にも出演
代表作はフランソワ•クリュゼやシャルロット•ゲンズブールと 共演を果たしたイヴァン・アタル監督による“Do Not Disturb”など

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コメント: 2
  • #1

    arisa (金曜日, 31 7月 2015 08:23)

    パリに今月引越してきました。今2歳半の息子がおります。主人は日本との往復で月の半分は不在ですし、所謂「昔の人」タイプで家事育児全くできません。9月からは私の学校が始まるのでシッターさんを探しております。日本人のシッターさんがいいな、と思っているのですが著者さまはどうやって探しましたか?差し支えなければヒントくださると嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。

  • #2

    Mihoko (土曜日, 01 8月 2015 00:15)

    こんにちは、ようこそパリへ。
    ご主人様が月半分も不在とのこと、語学がままならないうちは大変心細いことと心中、お察しします。実は私、用事があるときは姑に子供を預けておりまして、まだシッターさんにお願いした経験はないのですが、私が知ってる限りでお答えしましょう。

    基本、私のパリ在住の友人のママさんたちは、オペラ界隈の日本食材店やレストランで入手できる、日本人向けのovniやニュースダイジェストなどの
    情報誌に掲載のアナウンス、
    あるいはSNSのミクシィのパリのコミュニティサイトやjimomo http://paris.jimomo.jp/bbs/
    で、シッターさんを見つけているそうです。

    見つからない場合は、これらのサイトや情報誌に
    ご自身でシッターさんの求人募集のアナウンスを打つことも可能です。

    また、駐在の奥様たちは、15区に所在する日本人による託児所にお子様を預けている方が多いですね。
    http://ecole.japonais.paris.free.fr

    一刻も早く素晴らしいシッターさんが見つかりますように。