-022.人のふり見て…てんとう虫に誓う2014年


まえがき

 

 こんにちは。「南仏新婚journal」の続編として、今年から新たにコラムを書かせていただきます。もう新婚でも何でもなくなってしまったため、単純にコラムの名前を変えてみました。1年間のブランクを経たものの、内容はほとんど以前と変わらないので、なあんだ、と思われるかたもいることでしょう。

 

 このコラムのタイトルにある「コクシネル」とは、フランス語で「てんとう虫」。フランスの赤ちゃんたちが、目でものを認識できるようになった時から、いろいろなおもちゃや本のなかで見かけるもの。フランスの子どもが使うグッズには、しつこいほどにてんとう虫をモチーフにしたものが多くみられ、そのキャラクターたちはきまって「ウヒヒッ」とでも笑っているかのような、いたずらな目つきをしている。赤ちゃんや幼児にとって、赤と黒のその姿は、どんなに本の隅っこに描かれていても、何故か目で追ってママンに教えてしまいたくなる、とっても気になる存在のようなのだ。

 

 娘も1歳前から本のなかでてんとう虫を探しあてては指でつつき、街でいたずらっぽいてんとう虫のキャラクターを見かけては、反応しまくってきた。1歳の頃には、葉っぱにとまったてんとう虫をほんとうに指でつつき、プチッとつぶしてしまったこともあった。「好きだっただけのに…」。これには、お子さまムードの家族の会話が一瞬凍り付いたものだ。

 

 さて、今回コラムを再開させていただくにあたって、フランスでいちばん好きなものは何だろうと考えた時、このコクシネルが思い浮んだ。私にとってのフランス生活は、ひとりでというよりは、娘とともに歩んできた時間のほうが長いからかもしれない。ここでの生活が5年目に突入する今となっても、てんとう虫は私にとっても新鮮な存在である。30歳になるまでコンクリートに囲まれて生活をしてきた私の視野に、それはほとんど存在しなかったものだからだろうか。娘と芝生や木々に囲まれた公園に行って見つけるてんとう虫からは、幸運の予感すら漂ってくるのだ。

 

 ことに、私の住んでいるフランス南西部には、てんとう虫の出現率も高いようだ。窓を開けていると、時々家のなかに迷い込んできて、パパが指先にちょこんとのっかったてんとう虫を3歳児に得意げに見せたりしている。街なかを10分おきにグルグルまわって走るナベット(ミニバス)は、その名も「コクシティス」。てんとう虫の絵がダイナミックに描かれていて、乗り込む子どもも大人も優しく愉快な気分になる。 

 

 何故この人はよりにもよって「てんとう虫」なんかの話を延々とするのか…と思われたかたもいるだろう。それは、わたし自身の2014年の内なる平穏を大切にしたいという願いからもきている。

 

人のふり見て我が子育てを見つめ直す

 

 2013年は、日本人のお偉いさんを筆頭に、日本の社会の空気の質や色に、変化を、いや、「修正」を加えているような印象を受けた。特に、「特定秘密保護法」とやらの成立だ。私の頭のなかは、新年を明けても具体的なケースの全体像がはっきりせず、だからといってどんな有識者のコラムを読んでも、情報を引用掲載するような新聞の文面を読んでも、これといって有力な情報が得られずにモヤモヤしていたのだ。

 

 現時点では賛否双方から、いろいろな解釈が出廻っているように感じる。いちばんの問題点は、人びとに憶測での判断を暗黙のうちに強いているという状況だ。いいかえれば、全然クリアでないものが、否応なしに突然権力を持ってしまったという点にある。今まで素敵だなぁと読んできた、各分野の学者や表現者たちのブログやコラムからも、真意ある発言を拒むかのような沈黙を感じる。

 

 子育てにおいても、いたずらに親という権威をかざし、言語道断とでもいうように、早急な対応を急ぐだけでは子どもに不安を与え、反発を招くだけである。それまで築いてきた親子の信頼関係も、一気に失われてしまう。権威は世の均衡を、同様に家庭内での親子の立ち位置を決めるうえで存在するべきではあろうが、暗黙の「権威」が、こわい形相で威張った「権威」となってしまっては、ダメなのだ。社会でも、家庭でも。これはまた別の脅威になるのだろう。

 

 ダメなものは、どうしてダメなのか、分かりやすく何度でも理由の説明を。これこそが、子育てをするうえでの鉄則。忙しい毎日においては大変な作業であるが、とばすと後でいろいろなことがうまくいかなくなる。これには、大人よりも柔軟な頭をもつ子どもですら、分かりやすい説明が大事である。

 

 いつか誰かが、「子育てはクリエイティブだ」と言っていた意味が、今は分かる。可能性を最大限に信じて、その先へ、その先へと進むためのハシゴを丁寧に組み立てて行く。急な曲がりカーブでは、あれこれ工夫をして、いろいろなものを駆使してどうにか渡れるようにする。それも、ゆっくりと、子どもの歩幅を第一に考えて。見ているだけでなく、自分も一緒にそこを渡ってみたりもする。そのハシゴは、やがて子どもが自然と自分の力や発想で組み立てられるようになっていく。そんな願いや愛が込められている。

 

 政治もクリエイティブに、その都度クリアで気持ちの良い着地点を目指し、すっきりとした夢を与えるものであればよいのに。と、モヤモヤした気持ちと不安を抱きながらも、そんな「人」のふりを見て我が子育ての実態を見つめ直せる機会だと思うことにする。2014年も、3歳娘と道端を歩んで見つけるてんとう虫に、私は素敵な子育てを教えられ続けたいのだ。

1月吉日


column by 下野真緒/ Mao SHIMONO

1977年東京生まれ

女性ファッション誌出身、南西フランス在住ライター&エディター

「cafeglobe」「MYLOHAS」「シティリビング」ほか執筆中

フランスのナチュラル商品を日本に届ける「Natunique」会社代表

子育てに試行錯誤の毎日。日仏文化・習慣比較は家族の一生課題事項

 

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コメント: 2
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