-029.Do It in Barcelona


はじめての迷子

先週末、とある天気の良い日曜日、長男の友人の誕生会を少し郊外の公園で開く、というので私と子どもたちで出かけてきました。駅前で朝みんなで待ち合わせて、リュックサックにはプレゼントやカード、お弁当と水筒を詰めて、普段乗っているメトロや電車も、友達と乗るとなるとまた別の楽しさがあるのを抑えきれず、階段やプラットフォームで犬のように走り、はしゃぎ回る子ども達、それを追いかけてなだめる大人達。総勢5家族、子供も全部で10人集まって、その大きな自然公園についてからも、皆で模型列車に乗ったり、お弁当を食べたりと楽しく和やかに過ごしていたのですが、食事もデザートも終わって大人達はのんびりひなたぼっこをしながら昼寝、子どもたちはサッカーボールや遊具で遊んで、それはそれはおとぎ話のようなのどかな週末を楽しんでいました。

 

するとふと、どこからともなく突然イノシシが出没し、みんな大騒ぎ。バルセロナの市内の山沿いの自然公園には野生のイノシシが住んでいるという噂は聞いてはいたのですが、こんなに人慣れしているとはよもや想像もしていませんでしたので、子どもたちがキャーキャー叫んで逃げたり追いかけたり、大人たちも一斉に携帯電話のカメラを向けて撮影を始めます。イノシシは中型犬くらいの大きさで、赤ちゃんではないけれどまだ多分若いのでは?と思われる感じ、ピクニックに来た人々のお弁当やお菓子などが狙いみたいで、犬のように体を撫でさせてくれたりはしないものの、特に人間を見て逃げたりする様子もありません。木の影、ベンチの下、山の斜面を上手に使って人に触れないように、食べ物を嗅ぎまわって同じ所を何周も走り回っているようです。

 

しかも気が付くとどうやら複数居ることが分かり、皆イノシシを驚かせないように、小さい子供をあまり近づけないように、イノシシも人間もその状況に慣れてきて、程よい距離を保ちながらまた昼寝などをし始めて居た頃でした。ふと気が付くと、入れ替わり立ち代り飲み物や果物をせがみに戻ってくる子どもたちの中で、うちの温だけ見当たりません。さっきエミルと一緒だったよ、今ロラと一緒に居るのを見たよ、と子どもたちの方でもかわるがわる違う子どもたちと一緒に遊んでいたようなのですが、どうやら彼だけなにかのはずみでみんなとはぐれてしまった模様。

 

最後に子どもたちが彼を見てからまだ10分も立っていないとはいえ、とりあえず一人で居るらしいことだけは分かったので、私も慌てて子どもたちを連れて探しに出かけます。

 

オレネッタというこの公園は市内から北西に向かって山の中腹にあるわりと大きな自然公園で、敷地は柵で囲まれてはいるのですが斜面や森が多く、はっきりした道もないので、ひとつ道を間違えるとかなり迷いやすく、しかも木々や茂みが多く見通しが良くないので、歩いているうちにうっかり戻って来られなくなったに違いありません。しかも子どもたちの話によると、木登りをして遊んでいたところ、温がまたイノシシを見つけ、追いかけようとしていたみたい、とのこと。うーむ。これはマズイ。子どもたちにいろいろ聞いているうちに、不安が募ってきます。

 

とりあえず、お弁当を食べるまでに行ったあらゆる場所をもう一回たどりながら、子どもたちと一緒に大きな声で名前を呼びながら歩き、かつあちこちに居る人達に、こんな子供は見ませんでしたか?と訪ねて回ることにしました。幸いというか温は半分日本人なので顔も覚えやすいですし、大きな赤い星のついたシャツを着ていたので見かけた人が居れば多分気がつくはず。そう思ってまずは敷地の斜面上、皆で模型列車に乗ったあたりに向かって探索を始めたのですが、周りは完全に森の中といった景色で、声も届いているのかかなり微妙です。あっちから声がするよ!という子供の声についてまた別の斜面を登って行くと、別の子どもたちが遊んでいるだけだったり、そうして居るうちに自分たちの位置も微妙に分からなくなってきたり、古い水路(半分洞窟と化している)の跡を見つけたりして嫌でも不安が募ってきます。木登りしているうちに、足を滑らせて、頭を打って意識を失っていたりするのかも、あるいは探検と思って水路に潜り込んで、よじ登れないような穴に落ちていたらどうしよう、そんなことをちょっと考えたりしながら、名前を呼ぶ声にも緊張が混じってきます。

 


 

結局、20分くらい歩きまわって一番南の斜面、メインの入り口近くに来てからようやく「あ、その子なら今さっき見ました。この下の売店のところに警察官と一緒に居ると思います」という情報が!

柵の下をのぞき込んで「すみませーん!!」とどなると、日本人の私を見たまわりの人達が、「あ、多分この人がお母さんみたいですよ」と何やら騒いでくれています。「あっちを回ると下に降りられますよ」との指示に従い、そこからさらに斜面沿いの道をぐるーっと回ってやっと再会!ちょっと泣きそうになりながら、とにかく抱擁。本当に良かった!

 

おまわりさんは私を見て一言、「いまやっと、ちょうど電話しようとていたところでした」。実は人混みの多いところで迷子になった時の用心に、私と夫の携帯電話番号を覚えておくように行っていたのですが警察官を見てあまりにびっくりしてうまく思い出せず、自宅の番号(こちらは覚えていない)を聞かれてさらにパニックになり、両親の名前、住所、学校の名前やら友人の名前やらを片っ端から話したそうなのですがあまり役に立たず、最初に彼が迷子になったのを見つけてくださった女性は両親の名前からツイッターやフェイスブックを探してそこにメッセージを送り(夫はあいにくその時一緒にピクニックには来られず、別の場所で後からそれを見て驚いた訳ですが)やっとのことで温が私の携帯電話番号をちょうど思い出したその瞬間に私達が現れたという訳だったのでした。

 

ちょうど同じ時刻、別の警察官たちが公園中の家族に「こういう子供を保護したのですが心当たりありませんか」というお知らせを伝えて回っていて、ピクニックの場所で待ってくれていた他の家族のところにたどり着いたところでした。

 

温も、はじめはみんなで木登りをしていてイノシシを見つけてははしゃいでいたようなのですが、ふと気づくと一人になっていて、ピクニックの場所に戻った(と彼は思ったのだけれど実際は少し似た別の場所だった)ら誰も居なかったので驚いて別の道を探し始め、どうしようかとウロウロしていたら、知らない親切な女性に「かくれんぼして遊んでいるの?それとも迷子になったの?」と聞かれて「どうやら迷子になったみたい」と答え、その方がツイッターやフェイスブックで私達を検索した後に警察に電話をして下さって保護してもらったのでした。

 

私達が闇雲に探しまわっていたのはほんの20分くらいの間ではあったのですけれど、警察官には「そういうときは、すぐに警察に通報した方がいいんですよ。一人で探そうとしないで」と諭されてしまいました。でもみなさんだったら最初、どうするでしょう?本当に迷子になっているのか確かめるために、まずは自分で探しますよね。1時間たっても見つからなかったら電話するかな、とか、そのへんの判断は実はなかなか難しそうです。都心の人混みの中で迷子になったら、話は別ですけれど・・・。

 

というわけでこんな騒ぎになっていたとは温本人も気づかず、後からいろいろ「みんなでいっぱい探したんだよ!」と説明されて、「ごめんなさいごめんなさい」と子供ながらに事の重大さに気がついて平謝りしていたのですが、親である私も、見つかって良かった、怪我などしていなくて本当に良かった、という気持ちと同時に、親切な人々やプロの警察官の方々が、こんなに短時間にこんなにいろいろ動いて下さって、申し訳ないような、そして本当にありがたい、あたたかい気持ちになったのでした。

 

迷子になっていたときは写真を撮る余裕もなかったので、イメージは全て迷子前、と迷子後、の写真です。

 

ではみなさん、次回まで、ごきげんよう。

 

 

Column by Tomoko SAKAMOTO

カタルーニャ人でグラフィック・デザイナーのダビ・パパと一緒に

ブック・デザインとその周辺を手がけるSPREAD(www.spread.eu.com)

というスタジオを主催する編集者・ママのコラムです

「遊んであげない。一緒に遊ぼう!」をモットーに二人の男の子を育てています