-002.Advice for getting pregnant faster

妊娠5ヶ月、お腹がふくらむにつれ、私自身の動きも鈍くなってきた昨今。現在、18ヶ月の息子は毎日のお散歩中、歩道やスーパーなどの店 内を縦横無尽に駆けめぐるのだけど、ここはフランス。すれ違う人々に対してご迷惑をかけぬよう、私が息子の手を引き寄せようとするたび、 8割の方がこう言います。「そのまま彼を自由に歩かせてあげて。私には時間があるのだから」と。また、すれ違いざまに「あんよが上手ね」 と、息子にやさしく声をかけてくれる人も数多。それにしても、

“私には時間があるーー”。

というフレーズは、なんとまばゆいきらめきに満ちているのでしょう……! 日々、息子を通じて行なわれるフランス人とのコミュニケーションからは、学ぶことがいっぱい。私自身も、心豊かでありたい、と感化される一方です。

さて、フランスにおいても日本同様、晩産化が進んでいるご様子、私の周りでは40歳以上で初産を経験する人も少なくありません。また、有名な例ではサルコジ前大統領夫人のカーラ・ブルーニが43歳で10年ぶりに第二子を儲けたり、フランス人の友人のお母様が20年ぶりに元気な第三子を出産したり、と様々。実際、私ども夫婦も、第二子を儲けるのは40歳以降でも良いのではないか、という話をしていたほどです。第一子出産後、育児の楽しさに目覚めるまではーー。

 

片や、フランスは日本と比較して気温が低いせいでしょうか、はたまたこの国ではピル(低用量経口避妊薬)が普及しているせいでしょうか、 不妊に悩む知人も多数。そんな中、第一子につづき第二子も、親しい友人に「そろそろ妊娠します」と宣言した、その翌月に懐妊した私。友人や知人から、妊娠する方法を教えて欲しい、という問い合わせが多いので今回、私が妊娠するに当たって心掛けたことや、スムーズな妊娠に関する知識を、私の知っている範囲でお話しましょう。


まず、基本的に薬を飲むことを好まない私は、生涯一度もピルを服用したことがありません。フランスでは興味深いことに、大多数の女性が10代後半で自ら産婦人科に足を運び、医師から性教育を受けます(思春期の娘を持つ母親が、娘の為に産婦人科の予約を取らないと、「周りの同級生はみんな産婦人科へ行ったの。だから、ねぇお母さん、私もそろそろ産婦人科に行きたいのだけど……」と、娘の方から母親へお願いするそう)。そこで、一通りの性教育を受けたあと、医師からお勧めされるのが、婦人科医の処方が必要なピル。したがって、10代後半からピルを服用しているパリジェンヌは当たり前、またフランス人の彼氏の要望でピルを飲みはじめる日本人女性も多く、私の知人の過半数がピルを服用しています。そして、妊娠したいと思った場合、ピルの服用をストップするところから始めるのが、フランス流。避妊薬の服用を止めればすぐに妊娠できると思っている方も多いようですが、そもそもピルとは“排卵をコントロールする便利なツール”ではなく、“排卵を止める薬”。もちろんピル単体のみのせいではなく、各自の体質や複合的な要因が考えられますが、ピル停止後、一年以上も妊娠できずに苦しんだ女性、あるいは生理不順や無排卵になってしまった方が実際、私の周りで見受けられます。また、出産経験のない20~40代に多く見られ、現在は10人に一人の女性が患っているという、子宮内膜症(チョコレート濃縮)。これは、子宮の内側にある内膜の組織が子宮以外のところで増えていくという進行性の病気で、月経のたびに炎症や出血をくり返し、血尿や血便が起こることもある病い。その病気を患う原因として、 ヨーロッパのマクロビオティックでは、第一にピルとタンポンの使用が疑われている、という点も見逃せません。

時に生理とは、妊娠せずに使われなかった子宮内膜等の組織に蓄えらえた栄養を血液や体液と共に体外に排出し、子宮内を覆う組織を新しくする行為ですよね。そこで私は“生理を最高のデトックス”だと考えるようになってから、10数年が経ちます。きっかけは過去、少しだけ通った日本のヨガ•スクール。そこでは、ヨガ断食の間や生理中の洗髪は、かたくなにストップするよう指示していました。なぜなら、これはアーユルヴェーダの理論にも通じるのですが、確かな相関関係は明らかになっていないものの、頭の頂上に位置するツボ=百会(ひゃくえ)を刺激すると子宮の収縮を招く、と考えられているからです。ヨガの師いわく「月経開始から終了するまでの間は洗髪しないことを推奨するが、それ が無理なら経血が多い三日間、あるいは最低でも生理開始から24時間の洗髪を止めると良い」とのこと。そこで私は、生理開始から二日間の洗髪を止めてみたら、まあ不思議。生理開始から三日間の経血量が増えた一方、月経の日数が驚くほど短縮……! そして、まるでデトックスをしたかのような爽快感を享受︎ 。以来、この手法を継続させて10年以上になります。とはいえ、猛暑やハード•ワークをこなした後など、洗髪を我慢するのは難しいときもありますよね。その際、洗髪すればやはり以前同様、経血がダラダラと長引きます。事実、この方法を試した私の友人たちにも、同じような結果がもたらされたほか、月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)や生理痛も軽減した方までいる、ということも特筆すべきポイントでしょう。


ところで、江戸時代の頃までの日本女性は、トイレで経血を排泄していた、という話はご存知ですか? 時代の流れと共に女性の子宮や骨盤底筋がゆるみ、日本で使い捨てのナプキンが普及してから、ますますそのゆるみに拍車がかかっている模様。元来、クラシッ ク•バレエを幼少期から思春期まで習っていた私は、“天井から糸で頭の先を吊るされているように立ち、お腹を引っ込めてお尻をキュっと締める”といった、クラシック•バレエの基本姿勢が板についているせいでしょうか。長年、トイレでの経血が当然だと思っていましたし、バレエを習っている友人には私と同じく、自分の決めたタイミングで経血の排出を行っている方も多数。このような経血のコントロールを、生理開始から三日間の洗髪を避けることで可能になった、という友人も中にはいます。この効能はコットン100%のオーガニック布ナプキンにも通じるようですが、せっかくの良質な布ナプキンを強力な合成洗剤で洗浄するのはナンセンス。そして、私はまだ布ナプキンを使用したことはありませんが、布ナプキンを愛用している友人いわく、布ナプキンに付着する経血の匂いは耐えがたく、洗浄に手間暇がかかるとのこと。この問題は体臭同様、野菜中心の食事法を行えば解決するのではないかと思うのですが、特にフランスで肉類や乳製品を一切控えるのは至難の業。 よって、私と同じく布ナプキンの使用まではなかなか手が届かないという方は、まずは生理中の洗髪を控えることで様子を見てみるのも良いかもしれません。ちなみに、 骨盤底筋群の脆弱化によって起きると言われる、膣のゆるみ、子宮脱、直腸脱、そして多くの高齢者が悩みを抱えている尿失禁などの症状。前述のヨガの師は、 姿勢を正しながら椅子に浅く腰を掛けて、両膝を垂直に上げて数秒ストップする、というエクササイズを日々くり返し行うことで、それらの病いの防止に繋がる、とおっしゃっていました。これは、通勤途中やデスク•ワークの合間などでも、手軽に行えるエクササイズ。ぜひ、みなさんの生活にも取り入れていただきたいものですね。

さて、このような実践や積み重ねの効果でしょうか。常に生理周期が安定していて、生理不順とも無縁の私。そんな私は、ネットで検索すればすぐに出てくる、排卵日計算サイトを愛用してます。妊娠を試みる月の数ヶ月前から、生理開始日や生理周期をメモ。そして、自身の生理周期を改めて確認した上で、排卵予定日を出します。私の場合は、妊娠しやすい体質だったのでしょう、これだけで基礎体温を測ることなく、妊娠することができました。しかし、確実な妊娠を目指す方は、こちらもネットで検索すればすぐに、便利な基礎体温表が出てくるので、やはり日頃から基礎体温を測る方が賢明かもしれません。

いかがだったでしょうか。他、月経をスムーズにするハーブ、女性の子宮組織を整える果物に、男性ホルモンに効果的な食べ物など、まだまだお伝えしたいトピックがありますが、それはまたの機会にいたしましょう。

 

column by Mihoko Kaneda
長年に渡り音楽ライターとして活動してきたが、2006年に渡米
2007年より拠点をパリに移し、ライフスタイル•ファッション誌をメインにジャーナリス トとして従事した後、フランス人男性と結婚
近年は、フランスのTVドラマや映画にも出演
代表作はフランソワ•クリュゼやシャルロット•ゲンズブールと 共演を果たしたイヴァン•アタル監督による“Do Not Disturb”など
現在、第二子を妊娠中