-024.森の夏休み<前編>

みなさまこんにちは。絶望的に暑く、長い夏がいつの間にか終わって、やっと子供達が新学期を迎えていつもの日常が戻ってきました。夏というのは、暑いからなのか、長いからなのか、本当に子供達が良く成長します。夏という季節が一つ終わると、なにかこう、 夏前の彼らが幼かったなあと懐かしくなるような気さえするくらい。そんな感じがします。

 

さて、今年の夏も本当にいろいろな事があり、たくさんのことをして遊びましたが、夏休みの出来事を、振り返る形で、「森のなつやすみ」と「夏休みの作品」の二回に分けてみなさんに報告したいと思います。

 

第一回目は「森の夏休み」です。

 

長 男が7歳、次男が4歳と、大分やんちゃで大きくなり、もうベビーカーなどもすっかり不要になったので、前々から憧れているキャンプへ行きたいと思ったのですが、いきなりテントや寝袋、簡易台所用品などの装備をすべて揃えるのは大変だし、とりあえず目指べきところは、テントでの宿泊そのものではなく自然の中で思いっきり遊ぶということでしょう、ということで、家族で出かける林間学校のようなバカンス・プログラムに一週間参加してきました。バルセロナから車で北へ約1時間半、さして遠くないサウというダムのある湖沿いに建つ宿泊施設に泊り、カタルーニャ全土から集まった家族たちと一緒にちょっと合宿のような? 一週間をすごしてきました。

 

毎年のように出かけているピレネーの山々に比べて距離としてはずっと近いはずなのですが、森や自然の深さや大きさにあらためて驚きます。施設内は一応wi-fiも使用できる場所があり、電話も時々圏内になって受信ができるはず、なのですが、その接続状況の悪いこと、早々にあきらめて、せっかくバカンスなのだからとほぼ携帯電話のスイッチも切り、ネットのニュースもメールのチェックもしないで一週間過ごしてみる、という試練に変えることとしました。やってみると、なんだか落ち着かないのは最初の一日だけで、あとはむしろ本当に快適で、子供達と長々と話をしたり、本を読んだりする時間ができることに驚きます。

 

さらには、毎 日の行動は皆基本的に自由なのですが、新聞を買えるようなとなりの町まで車で10分かかり、三食おやつまでついていて、生きるのに必要なものは揃っている ので、ついにはお財布さえ持ち歩かなくなりました。こうなると、驚いたことに、子供連れで来ている大人の立場でありながら、まるで本当に自分が子供に戻っ たような気持ちになってくるから不思議です。

 

そこでの暮らしはこんな感じでした。朝起きる。朝ごはんの時間まで、あるいは子供達が目を覚ますまで本を読む。皆で食堂に集まって朝ごはんを食べる。ハイキングなどに出かける。2,3時間歩いてお腹をすかせて帰ってきて、昼食。少し昼寝、または読書。プールでひと泳ぎしたり、卓球やサッカー、バスケットなどのスポーツをする。おやつ。絵を描いたり、子供達に日本語の読み書きをちょっと教えたりしてその後夕食。ボードゲームなどをしたり、他の家族とも団欒。絵本を読んで子供たちが寝たら、また本を読んで、就寝。そこに少し、仕事のことを考えたり、メモしたりする時間が入る程度。

 

普段の慌ただしい生活がカチリと確実にスイッチオフするのが感じられて、見えるものが全然違ってくるのです。

 

子供達は、特にそんなことに感動する様子もなく(彼らはまだ携帯電話も持っていないし、お財布も持ち歩いていませんし)いつもの通りですが、やっぱり森ではつぎつぎに面白いものを見つけてきます。松ぼっくり、どんぐり、大小様々な大きさと形の木の棒、小石、花、葉っぱ。虫、かえる、魚などなど。「見て見 て!」と見せられると、なんてことのない普通の棒なのですが、拾われた場所に行って一緒に見てみると、確かに長かったり、きれいに二股に分かれていたり、つるつるしていたり、彼らが拾っただけのことはある特別な棒きれであることが分かります(拾って集めてしまうと後から見てただの棒になってしまうことも多いのですが)そうして、何本拾ってきた後でも、また次のを拾ってきて、部屋のタンスの彼らの棚やベッドの下は、あっという間にそういうものでいっぱいに なっていきます。

 

普段、街で道に落ちているものといえばその大半はゴミですが、自然の中にいると、少なくとも子供達にとっては、地面に落ちているものの大半は宝物に見えるようです。本当はそういう世界が、本当の地球の環境なのですよね。来てよかったなあ、としみじみと思うのでした。

 

続きはまたすぐに!

 

これはただの柏(オーク)の葉っぱですが、モンスターの兄弟にも見えます。後で枯れると分かっていても、大事に拾って持ち帰ります。

 

湖の岸辺に重なった流木から生えてきた新しい木の芽。植物も生き物だなあという感じがしてとてもかわいいです。乾いた流木は、硬くて軽くてなめらかで、つまり棒きれ的に高級感あふれる感じがするらしく、子供達は何本でも集めてしまうのです。

 

救命道具を浮き輪として使ったのも初めてでした。

 

生きているカエルを捕まえるのは私もざっと30年ぶり以上かも!つかむと怒って膨らむのです。た、楽しすぎる。10年くらい前だったら「気持ち悪い」とおもったかもしれませんが、子供が出来てからはこういうのも全然平気です。むしろ子供達のほうが「かわいそうだから早く逃してあげなよ」と母を諭すのでした。

天然のブラックベリー。食べ物が森から取れることがうれしくて、いくらでも採って食べてしまいます。けれど集めてジャムにしようと欲張ると、瓶に半分も集まらないくらいしか見つかりません。だから散歩しながらその場で食べてしまうのが一番おいしいのです。普段食べているどんなおやつより甘くなく、むしろ酸っぱいくらいなのですが、いくつも食べていると特に甘いのとそうでもないのがあり、甘いのに当たると本当にうれしいのです。

 

これ、多分前に誰かがポイと捨てたプラムの種から勝手に生えてきたんじゃないの?と思われるプラムの木。身は小さくとも、とても甘かったです。

 

子供を湖に突き落とし、離れていく父の図(全然平気ですけれど)。

 

ダムを作るために水をせき止めたので、かつてこの辺りにあった教会が沈み、鐘塔が見えています。現在は、ユニークな名所として教会の「跡」を残すために、中の空洞にセメントを詰めて崩れたりしないようにしているそうです。水不足の年には教会の全像が現れるそうです。

長男の温が気がついた面白い事実の一つ。たとえばにわか雨が振ると、樹の下には雨がふらないので雨宿りできますよね。でもその後、雨が止むと、時間差で樹の下にだけしずくが落ちてきて、雨降りの音がするのです。注意してみると、確かにポタポタと、木が奏でる雨音が!

水着に着替えるヒマもなく、パンツ一丁で湖に入っていきます。

湖でカヤックに挑戦。右はモニターのお姉さんバネッサ。技術、体力、ユーモアともに天下一という感じでした。

彼らにとっては多分、ダイヤモンドよりもきれいな緑に光る虫。



Column by Tomoko SAKAMOTO

カタルーニャ人でグラフィック・デザイナーのダビ・パパと一緒に
ブック・デザインとその周辺を手がけるSPREAD(www.spread.eu.com)

というスタジオを主催する編集者・ママのコラムです

「遊んであげない。一緒に遊ぼう!」をモットーに二人の男の子を育てています