偉大な建築家ル・コルビジェのパリにある元アトリエ兼自宅、通称ナンジェセール・エ・コリ通りのアトリエ&アパートメントを見に行って来ました。今日は、そのスケッチを思い入れたっぷりに描きます。
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様々な装飾様式の建築が当たり前の時代に「住むための機械」「住居は住む人にとっての宮殿であるべき」というシンプルで自由、理想主義的な発想で「住居」の考え方を革新し、やがて近代建築運動に多大な影響を及ぼしたル・コルビジェのアトリエ&アパートメント。彼が建築界でもたらした影響力は、今の感覚でいうと、丁度、コンピュータを専門家のモノから一般生活者のモノへと革新し、普及させたスティーブジョブスのような存在だろうか。
今回訪れたアトリエ&アパートメントは、丁度、建築家として国際的な舞台で活躍していた40代後半から元モデルの妻イヴォンヌ夫人と共に暮らし、南仏カップ・マルタンで亡くなるまでを過ごした場所。
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ル・コルビジェはここで、午前中、絵を描いたり彫刻を作ったり、アートを追求する時間を過ごし、午後から設計業務のために働いたと言われている。建築に造形美や感動を求めた彼にとってはアートを追求する時間は非常に重要な探求の時間。また、ル・コルビジェの絵や彫刻は彼が創る建築空間の中にも置かれ、空間の広がりや絶妙なアクセントとして使われている。
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このアトリエ&アパートメントは、そんなル・コルビジェにとって間違いなく理想に近い住まい、自分とイヴォンヌ夫人の「宮殿」としての快適さを細やかなところまで精密に追求した跡がある。夫人からはそのシンプルさからか「兵舎のようね」などと揶揄されたりしたという逸話もあるが、とにかく建築とアート、そして革新への信念を生涯貫き、ここから様々な構想を生み出していったのだ。
太陽の光、風、開放感、シンプルな空間構成、ル・コルビジェの住居はこうした本来の人間の身体が欲する快適さを純粋に追求しているように感じる。そして細部まで拘ったル・コルビジェの眼差しや息吹が感じられる。同時に一人の生活者として、一人の夫としてのユニークな発想、愛情が両方垣間見える。
具体的に見てゆくと、例えば、壁と天井の入隅やバスルームの壁面の出隅等の角部を全て丸く処理していたり、ダイニングの窓に素敵なステンドグラスがデザインされていたり、内部空間には様々な大きさのトップライトを取り込んだり、開けると部屋同士が一つになるような大きな間仕切扉があったり。また、外のパリの夜景を眺められる足高のベッド、洞窟のようなシャワールームなど、至る所に様々なユニークな仕掛けががある。ダイニングからはブローニュの森が一望出来、ゲストルームのベッドからエッフェル塔が眺められ、草木が繁る屋上のベランダからはフレンチ・オープン・テニスが行われるスタッド・ローラン・ギャロスが見える。スポーツ好きだったル・コルビジェには、このロケーションも重要だったのだろう。
そして、何よりも印象的なのは空間全体に漂う「フィット感」ともいえるような空間自体の美しさや快適性。ル・コルビジェはモデュロールという人間のサイズに合わせた独自の尺度を開発したが、その効果を実感する。
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「建築を目指して」というル・コルビジェの著作の日本語版のあとがきにこんな逸話が描かれています。この本の翻訳者であり、元ル・コルビジェ建築事務所で働いた建築家・吉阪隆正氏(故人)が描いたものです。1956年の夏、避暑地・カップマルタン(妻イヴォンヌ夫人にプレゼントした小屋がある)に居たル・コルビジェを訪れた吉坂氏(当時41才)に対して、地中海の陽射しの下、ぶどう畑のつくる淡い日陰のテラスでベルノーを飲みながらル・コルビジェがこう語ったそうです。
「人生をかけるにはまだ青春がいっぱいだ。今君の唱えていることは、君が生きている間に責任がとれる。大いにやりたまえ。」と。
ル・コルビジェは、その3年後に最愛の妻イヴォンヌ夫人を亡くし、さらにその3年後に最愛の母を亡くしました。そして、生い立ちや自分のしてきた仕事の回顧をまとめあげた1967年の夏、避暑地・カップマルタンの海で帰らぬ人となりました。78才でした。
偉大な建築家が自ら選んだ死だとも言われています。
本日、8月27日は、そのル・コルビジェの48回忌、心からご冥福をお祈りします。
※ 写真は、南仏カップマルタンにあるル・コルビジェと妻イヴォンヌ夫人のお墓です。ル・コルビジェが自ら設計しています。
(’Le Corbusier Le Grand’PHAIDON社より)
column by 梶谷拓生/Takusei
KAJITANI
エクスペリエンスデザインを仕事にしてます
技術やデザインやヒトを融合して新しい体験やサービスを創りだす仕事です
サッカーをこよなく愛し、今も地元チームのミッドフィールダーとして活動中
サッカー好きな長男、音楽好きの長女を持つパパでもあります
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