-015.『さらば青春の光』なイギリス光景

 

いわゆるガイドブックに載っているような観光名所ではないけれど、
ある意味最もイギリスらしい場所のうちの一つ、『ACE CAFE LONDON』のご紹介です。

 

ロンドン北西部Stone Bridge Park駅近くにあるこの建物。
戦時中、ナチスドイツの爆撃により破壊されてしまいましたが1949年に再開。
1950年代~60年代にかけ一世を風靡したロッカーズの聖地だった場所。
ここは60年代のロンドンで唯一の24時間営業のカフェだったのだそう。
『さらば青春の光』でおなじみ、ロックとバイクがイギリスの若者に爆発的にヒットした時代です。
金属のビョウで装飾したレザージャケットに白のペンキで"ROCKERS"とペイントを入れ、
エースカフェのワッペンや缶バッチをつけたファッションが当時の最もクールなスタイルで、
ロンドンではバイクに乗ってエースカフェに行く事がイカしてると言われていたのだとか。
ビートルズも1962年にデビューする前はロッカーズファッションに身を包んでいたことは有名です。

 

 

エースカフェは1969年に一度閉店に追い込まれましたが、
元ロッカーズ達の熱い声のもと1997年に再オープンし2001年には改装が完了しました。
ロンドンのユースカルチャームーブメントを受け継ぎ今なお知る人ぞ知る名店として、
ロックやイギリス50~60's、ヴィンテージカーやバイクを愛する人々から
文化交流の場として愛され続けています。

 

 

現在では曜日ごとに様々なイベントも開催されています。
例えばある日はフレンチクラッシックカーナイト、
イタリアンヴィンテージカーナイトに、BMWやメルセデス等ドイツの車やバイクが集まる日。
モッズのminiが集まる日もあります。そしてブリティッシュロックナイト等々!

 

 

ロッカーズ全盛期のエースカフェは若者が夜な夜な集まり朝まで騒いだ熱狂的な場所だったようですが、
現在ではリラックスしてビールを飲み食事をしたり、マグカップの熱い紅茶やコーヒーが飲めるような
子供から初老の方まで幅広い年齢層が各々楽しめる空間です。
(ただ、金曜日の夜はまるで60年代にタイムトリップしたかのような光景がくりひろげられるそうで、
我々日本人が映画や写真でしか見られない『決してファッションでない”本物”の英国ロッカーズ』が集まってくるのだそうです!)

カフェメニューは『ザ!イギリス大衆飯』という感じ、まさにパブメニューです。
イングリッシュブレックファストに始まり、フィッシュアンドチップス、チリコンカン、
ソーセージサンドイッチ、各種バーガー、ステーキパイ等々、
かなり充実したセレクション。気どりのない本場のイギリスの庶民の味を堪能できます。
そしてなによりその量の豪快さといったら!
ホットドッグのパンなどは子供の顔の2倍はあるであろう大きさ。
この日私が注文したチリチーズ&チップスも3人前はありそうな量であまりの巨大さに驚いていると、
お店のお兄さんは「グッドラック!」と言い愉快そうに笑っていました。

 

サブカルチャーや音楽、ロックやモッズ、ファッションが交差し60年代には流行の最先端だった場所。
刺激に満ちたブリティッシュカルチャーの残像がここには今なお色濃く残っています。
十代の頃にさんざん憧れた光景に思いを馳せ、

エースカフェで改めて「あぁ!イギリスに来たのだなぁ」と心が踊るような感動をおぼえました。
ここは単ににバイクや車好きが集まる場所というだけでなく、様々な角度から楽しめイギリスを感じることのできる空間です。
エースカフェの空気感を体感する事で、また一歩イギリスの深い部分に触れられたような気がするのです。
機会があれば是非足を延ばしてみてはいかがでしょうか!

 

column by Masae Lamsdale/ラムズデール 昌栄
グラフィックデザイナー/1973年広島県生まれ
都内デザイン事務所勤務を経て、2000年より独立
夫と4歳になる息子、蒼一郎(そういちろう)とイギリス在住
ヴィンテージのデザインやタイポグラフィ、家具が好きで
グッドデザインに基づいたバイイング活動も始動中
イギリスデザイン・ヴィンテージのオンラインショップ&Stillをオープン
http://www.andstill-vintage.com/