-008.次男の彼女のことなど

子供を育てる立場になって親の気持ちがやっと理解できる、というのは昔から言われていることですが、私の場合も然り。

なんとまぁ苦労をかけたものかと思うと同時に、感謝の気持ちでいっぱいです。

 

子供達と接するときには過去の自分と親の関係性を参考にすることが多いのですが、そんな中、いくつかの事象については同調することができず、「これは譲れない。やはり私の考えを貫いていきたい」と考える場面もあります。
 
その中のひとつが“子供の恋人との接し方”です。

母は10代で田舎を飛び出して上京し、当時では珍しい職業婦人になったという経緯もあり、基本的にはモダンな考えをすることも多いのですが、なぜか、私の “カレシ”については非常に厳しく考えるタイプでした。いや、むしろ“自分で恋人を選ぶこと”自体を頑なに認めなかったという感じでした。10代の頃から、まともに“紹介”することどころか話題にすることもままならず、適齢期の頃はさらに監視が厳しくなり、“母と娘で恋ばな”なんて夢のまた夢……。周囲に恋愛オープンな家庭が多かった分、その件に関してはちょっとだけ寂しい想いをしましたね。

そういう事情で、子供心にも“将来、自分に子供ができたら、その恋人を受け入れて干渉はしない”ということを、かたく誓ったのでした。私は子供たちに対して、そこを100%認めてあげよう……と。子供の恋人が自分と合おうが合うまいが、それは関係ないことです。自分の恋人選びに関する価値観をまったく親に認めてもらえない私でしたが、そこは譲れませんでした。
 
現在大学に通っている次男には、4年間つきあっている彼女がいます。おかげさまで、娘がいたらこんな感じかなぁ(きっと全然違うのでしょうけど)と、想像力を働かせて楽しんでます。ちなみに男の子は、彼女ができると“荒っぽさがそげるというか、母親に対しても優しく”なるので、すぐにわかりますよ。
 
その彼女が、見た目はオシャレで典型的なパリジェンヌなのに、中身は絶滅危惧種といえる“大和撫子”系なのです。でしゃばらない、おとなしいけど芯は強い、落ち着いている、奥ゆかしい、ほんのりと賢い……etc。もし息子と彼女がケンカしてることがあったら、悪いのは息子の方だと自然に考えてしまうくらい、とってもいい娘なのです。

 

最近では息子がいない時でも家にいますし、何日か続けて滞在していったりもします。部屋のお掃除からゴミ出しまで手伝ってくれていますし、私の長期出張中は家の中を綺麗に保ってくれて、私が帰るとキッチンが驚くほど綺麗になっていたりすることもあって、私は心の中ですでに“嫁”と呼んでたりもするのですが、日本の皆様にとっては常識はずれに映るかも知れませんね。

今、私の心中にあるのは、むしろ不肖の息子を好いて大切にしてくれてありがとう、といった気持ちです。思い入れをもって可愛がってしまうと“何か”の時に哀しい想いをすることになってしまうかもしれませんが、その時はその時。ケ・セラ・セラ。フランス流にいこうかと思います。
 
ママぢからをお読みいただいている皆さんも、いずれお子さんに恋人ができるときがやってきます(こなければこないでまた心配でしょう!)。その時に彼や彼女に対してどう接していかれるのでしょうか。
 
もちろんそれぞれの御家庭の方針もあると思います。けれど、子供は自分の所有物ではなく、別の人格を持った別の人間です。彼らが人の道を踏み外しでもしない限り、私は息子たちの人間性をちゃんと認めようと考えていますし、悪事に手を染めでもしない限りは尊重しようとも思っています。我が家はそうすることで幸せな雰囲気を作ることができていますし、彼女の存在も含めて、今のところうまくまわっているようです。

そういえば同性愛の結婚に反対とか賛成とか、今、パリはデモで大変騒がしいですね。けれど、“愛”があるというのは、たとえどういう形態であれ、それは素晴らしいことだと思うのです。「人生で最も大切なこと、それは“愛”」と言いきるラテンの国民。
アムールの都、パリにいるわけですから、“愛”に溢れた生活をしたい。そう思いませんか?

column by 岩本麻奈/Iwamoto Mana
コスメティック協会代表理事、皮膚科専門医
東京女子医大卒、慶応大学医学部で研修。市中病院で勤務ののち1997年に渡仏
現在はコスメプロデューサー、クリニックのコンサルタント
化粧品会社コンサルタントを務める傍ら、美容ジャーナリストとしても活躍
オリジナルコスメ『マジエージュ』も評判
近著に『女性誌にはゼッタイ書けないコスメの常識』(ディスカバ-21)と多数
20,19,18歳の母でもある
www.dr-mana.com

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コメント: 1
  • #1

    Kiko wanger (木曜日, 07 2月 2013 18:34)

    全く同感です。私の息子(アメリカ人とのハーフ)のお嫁さん(アメリカ人)もManaさんの息子さんの彼女とそっくりそのまま。主人と2人で’息子よ、でかした!”と言って喜んでます。産みの苦しみなしにいい娘を授かって様なものです。有難いと思います。同性愛結婚然り、同じ人間でありながらどうして平気で差別できるのか、理解に苦しみます。アメリカはスローながらベターな状況になっていますがまだまだ。特に中西部、南部はいけません。一日も早く平等に暮らせる日が来ることを祈るばかりです。