-014.La Boîte

箱のおはなし

子供の頃、親戚やご近所から頂物が届くと、まっさきに包装紙を開けて、よく母にしかられていました。
私の興味は丁寧に包装された包み紙の中から現れる美しいお菓子の箱。
小さな頃から甘いものより、渋い大人味が好みだったので、中身よりも、パッケージの方にわくわくドキドキしていたという、
ちょっと変わった子供時代の思い出です。
「この箱、絶対捨てないでね」としつこく頼んでは、空箱を集めて、当時大切にしていた宝物入れにしていました。

そんな箱好きは、大人になった今でも変わらず。
日本からのいろいろなお土産は、外国暮らしの私にとってとても貴重なものばかりで、大切に味わいながら頂いていますが、

その後に残る箱も活用しています。
最近一番のお気に入りは、花椿ビスケット。
今年、創業110周年の資生堂パーラーが発表した記念ボックスで、子供時代から見慣れたデザインがシックな限定色の赤で登場しました。
ビスケットにも一枚ずつカメリアの焼き印がされていて、食べるのがもったいないようなかわいらしさ。

しっかりとぱくぱく頂き、この箱だけが残っています。

八角形の缶の中心に刻印された椿は、眺めるだけでうっとりするほど、素敵。

クラシックなこのボックスになにを入れようかな?そんな風に悩む時間も楽しいものです。
いろいろな顔のイラスト付きは、今年の秋発売された、ランバンとラデュレのコラボレーションマカロンのパッケージ。

アルベール・エルバスの描いたイラストがかわいい。

中身のマカロンの味も、最近ラデュレが好んで作っている、ドイツのハリボーみたいなバナナやベリー風味を思わせる、

ライトな食感で、甘いものが苦手な私もこの味は大好きでした。
グログランリボンのきちんとした佇まいがおしゃれなこの箱には、趣味で買い集めたいろいろな国のリップクリームを入れています。

不二家のペコちゃんみたいなお茶目な女の子のカラフルな缶は、ひと目惚れして買ったもの。

イタリアの香り豊かなエスプレッソが大好きで、かの地を訪れる度に、スーパーや食料品店でコーヒーを必ず買うのですが、
このメーカーのものは、いままで見かけたことがなかったもの。
南イタリアの島で偶然見つけ、以来コーヒー豆入れとして愛用しています。

また、フランスの伝統工芸として知られるカルトナージュの箱は、田舎の蚤の市で。
素人のマダムが出店していたお店で発見し、なんと1ユーロでした。
材料費より安い!しかも、不器用な私が作るより断然に綺麗な仕上がり!
そのマダムが趣味で作ったという、この美しいゴブラン織りの箱は、ハンカチ入れとして、玄関先に飾っています。
この箱にまとめておくだけで探す手間がなく、ささっと取り出せるので、とても便利。

なにより綺麗な箱から毎日ハンカチを選ぶひと時が楽しい。

もうひとつ、クッキーが入っていたモンサンミッシェルのイラストの缶は、お裁縫箱として、東京時代から使っているもの。
スタイリストのアシスタントの頃からなので、かなりの間仕事の相棒として活躍中です。

今では蓋が壊れてしまって、きちんと閉まらない。

なのでゴムで留めてまでしつこく使い続いています。

別の箱に変えたいけれど、なかなかいいサイズが見つからないまま、今でも撮影時にお世話になっている働きものです。

日常で使う、こまごまとしたものの収納は、大好きな箱や缶に収めてずっと使い続けたいもの。
美しいパッケージは、中身がなくなった後でもいろいろなシーンで活躍してくれる、大切な大切な雑貨です。

Column by 鈴木ひろこ/Hiroko Suzuki
スタイリスト・ジャーナリスト
パリの街をお散歩しながら、モード、人、もの
店などいろいろなカワイイ!を見つけるのが趣味
著書に[フレンチシャビーなインテリア][大人スウィートなフレンチ・インテリア]ともにグラフィック社