-009.束の間の故郷・岡山

 

8月の中頃、岡山に2泊3日で帰省した。サッカーの練習で多忙な息子とその面倒を見る妻を東京に置いて、夏休みの1週間を倉敷で過ごしたいという娘を岡山に連れて行きつつ、自分も暫しの休息。

岡山空港に着くと、丁度、夕立が上がったばかりで湿気と熱気が入り混じった空気。山の中にある空港から実家に至る道、まばらにしか車が走らない道路や青々 と茂る田圃と小高い山々の風景、木造の農家の家や所々に見かけるヒマワリ畑。こうした風景は懐かしい記憶を蘇らせてくれる。小学生の頃の通学路、そして中 高生のサッカー部の練習の帰り道、灼熱の太陽の体感温度や騒がしい蝉の声が入り混じり、その記憶が触感となって蘇る。そうして、過去の自分と今の自分が確かな触感で繋がる感覚を確かめることが出来る。

 

夜、実家で漬けたらっきょうをつまみに冷たいビールを飲む。外からは、静寂の空気の中で様々な虫の声がおとなしく鳴り響き、ここでは都会にはない自然の静寂が感じられる。この自然の音も身体や心を芯からリラックスさせてくれる。逆に、普段、東京では自分の身体や心は無理に環境に合わせているんだなぁとも思う。

翌日、天気が良くなり、実家近くの備中国分寺近くに昼ごはんを食べに行く。この五重塔は江戸時代中期(1844年ごろ)に建造されたものらしい。恐らく、風景はその時代から変わらずこういう牧歌的な感じだったのだろう。ここに務める人たちは、さぞかしのどかな毎日を送ったことだろう。

 

午後からは、子どもたちとともに流れるプールがある公園へ。休んでいたおじいさんの頭にカマキリの子どもが飛び降りてきて、周りの子どもたちが大喜びでそれを見ながら騒いでいる。そんな些細なことも楽しい出来事になることが、ここ岡山のいいところだ。

こんな束の間の帰省で心を休息させて東京に戻ってきた。すると、この東京の人混みや雑踏もすでに身体に染み付いているようで、ちょっとした懐かしさとともに、自然に仕事への戦闘モードのスイッチが入ってくる。
そういえば、20数年前に上京してきて、ここで働き始めた時の自分もこんな感覚があったなぁ。束の間の帰省は、こんなことを思い起こさせてくれる貴重な機会だ。

 

column by 梶谷拓生/Takusei
 KAJITANI
エクスペリエンスデザインを仕事にしてます

技術やデザインやヒトを融合して新しい体験やサービスを創りだす仕事です

サッカーをこよなく愛し、今も地元チームのミッドフィールダーとして活動中

サッカー好きな長男、音楽好きの長女を持つパパでもあります