-001.家族の肖像

みなさま、はじめまして!
ラムズデール昌栄と申します。
お母さん時々グラフィックデザイナーを生業としながら夫と4歳になる息子の3人で、ロンドン郊外の小さな町に暮らしています。わたしとイギリスとの関わりの原点となったであろう家族の歴史について、少しだけ、その思いをお話したいと思います。

 

1931年、第二次世界大戦が始まる少し前にわたしの息子のおじいちゃんが、ここイギリスで生まれました。82歳になる好奇心に満ちあふれた、少年のようなくるくる動く瞳を持つおじいちゃん。新聞記事のスクラップや、今はもう大きくなってしまった3人の子供達が使っていたオモチャ、驚くほどの古い写真の数々を、今でもキチンと大切に保管しています。

 

夫の実家へ行く度に、わたしはおじいちゃんのアルバムを見せてもらいます。今は使われていない夫がかつて暮らしていた子供部屋にこもって、赤いレザー表紙のそのアルバムをめくる時間がとても好きです。もう何度見たことでしょうか。いつ見ても心がせつなくなってしまう、美しくて儚い人生を写し出す写真の数々です。

 

おじいちゃんのご両親の結婚式の写真などはまるでスクリーンの中の夢の世界の人々のようです。しかし、この小さな結婚式のすぐ後に、時代は第二次世界大戦へ。世界がとても貧しい時代に。。。彼等もまた必死で一日を生きていた労働者の一人だったそうです。年に一度か二度、特別な時のみ大切に撮る写真。そして大切な衣類。華やかな写真に秘められる、混沌としていたであろう時代の影。家族の笑顔。


これらの写真を眺める度、イギリスの普通の人々の昔の暮らしを思うのと同時に同時代の日本の歴史を思い、当時いかに世界各国がまだ遠かったのかを感じます。第二次世界大戦が終結してから67年。

果たして戦争は終わったのでしょうか?

 

世界はめまぐるしい。発展したり衰退したり、便利になったぶん不自然な歪みも。。。ぐるぐると歴史の歯車の上で人々が生きています。確実に言えるのは、世界は良い意味で狭くなったという事。それだけ可能性も希望も満ちている。4歳になる日英の血を分けた息子には広く柔軟な心を持った、いつか世界のどこにでも行ける逞しい人間に育ってほしいと願っています。

わたしのフィルターを通じて、日本人としての視点で見えるイギリス生活や気になるものをここchocolatmagの貴重な場所をおかりして少しづつご紹介していければと思っています。どうぞお付き合いの程、よろしくお願いいたします!

  column by Masae Lamsdale/ラムズデール 昌栄
グラフィックデザイナー/1973年広島県生まれ
都内デザイン事務所勤務を経て、2000年より独立
夫と4歳になる息子、蒼一郎(そういちろう)とイギリス在住
ヴィンテージのデザインやタイポグラフィ、家具が好きで
グッドデザインに基づいたバイイング活動も始動中
James.UKにてイギリスパッケージデザインとヴィンテージプロダクトを紹介中
http://www.masaelamsdale.com/