le souvenir=思い出
皆様、ご無沙汰しています。
3月の東日本大震災以降、心にぽっかりと大きな穴が空いてしまったような虚無感を感じていました。
離れたパリからただただ日本のことを案じ、時には頭の中でデフォルメされてしまう衝撃の報道。
震災直後は、あまりのショックでどうしていいのかも分からない不安定な状態でした。
そんな情けない私に喝を入れてくれたのが、親しい友人からのアソシエーション立ち上げの相談。
『自分たちに出来ることを少しずつでもやって、日本の復興のために行動しよう』
それがきっかけとなり、パリでファッションチャリティセールを開催。
180以上の名立たるモードメゾンが快く商品を寄付してくださり、100人以上のボランティアの方々のご尽力、
そして、いろいろな企業のスポンサードを得て、大盛況のうちにチャリティイベントを無事に終了し、
たくさんの方々の善意で集まった寄付金をすべて日本にお送りすることができました。
この場をお借りして、改めまして、参加して頂いた大勢の皆様へお礼を申し上げます。
今でも被災された方々が、困難な生活を強いられています。
失意の中で多くの人たちが、思い出の写真や品を探している映像を目にするたび、
「一番大切なもの」について改めて考えさせられている今日この頃です。
個人的な話で恐縮ですが、
数年前のこと、当時住んでいたアパートの真上の部屋から出火するという事故に遭い、
燃え上がる炎でパニックになりながら、なにを持って逃げるのか?一瞬の判断を迫られました。
おろおろしながら、その時に考えた結果、『命あるもの』自分にとって大切なのはそれだけなんだ。
と思い当たり、結局、お財布も、携帯もなにも持たずに言葉通り着のみ着のままで逃げ出しました。
出火元が上の階だったので、5時間に渡る消火活動のあとには、幸いにも自宅に戻れたのですが。
もしも自分に小さな子供がいたら、ケガや病気をしている家族がいたら、
家族同様に愛情を注ぐ動物が居たら、きっとおんぶして抱っこして逃げたことでしょう。
でも、実際には家には留守番で私ひとりだった。
普段大切にしている物や、宝物と思っていた物たちは、プライオリティが低かった。
だからこそ、大切な人から届いたカードや、手紙、メッセージ、イラストなどは、
命あるものと同様に、私にとってとても意味のある大切な物たちなんです。
普段は暖炉上の大きな鏡の廻りにたくさん並べて飾っていますが、
この原稿を書くにあたり、いくつか抜粋して、いつもと違うテラスに並び替えて写真にしてみました。
人と人とのつながりがとても大切な時期。
まだまだ不安定な要素がたくさんで、時にはめげてしまいそうになるけれど、
自分にとって大切にしたい心の中の基軸を改めて思い出し、しっかりと前に向かって進んでいきたいと思っています。
Column by 鈴木ひろこ/Suzuki Hiroko
スタイリスト・ジャーナリスト
パリの街をお散歩しながら、モード、人、もの
店などいろいろなカワイイ!を見つけるのが趣味
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