-007.Le Panier

パニエとは、カゴ編みバッグの総称ですが、フランス語のパニエという響きが好きです。
シルエットをふんわりさせるためにスカートの下に履くペチコートのことも"パニエ"と呼び、
それを重ねるだけでやわらかな優しいプリンセスシルエットが完成!

パニエの中には、いろいろな素敵なものがたくさん詰まっていそうで、その言葉を聞くだけでなんだかワクワクしてきます。
音の響きがカワイイ! なんて言ってはパニエに失礼なほど、今でも現役で活躍している働きもの。

 

例えば、フランス人の食文化を支えているマルシェ。
一年を通じて、毎日どこかの街角に朝市が出て、季節ごとの新鮮な食材が並ぶ市場は、よく目にするフランスらしい光景です。
まだ暗い早朝のマルシェには、パニエを片手に持ったムッシュウやマダムたちが、
真剣なまなざしで食材を選びながら、店主と雑談していたり。
吟味した末に購入したものをどんどんパニエに入れていく。
持ち手が短いので肩掛けも出来ないし、詰め込み過ぎると形が傾いてきて、あまり便利とは言い難いのですが、

重そうなパニエを抱えて、家路を急ぐみんなの顔は、満足気な幸福感に溢れている。
美味しいものは人を幸せにするんだなーと、見ている私までニコニコ顔になってきます。

 

また、ビストロやレストランの人が、界隈いち美味しいと評判のパン屋さんに大量のバゲットを買いに行く時も、

ローラー付きの縦長パニエを持参して、その日の分をまとめ買いしていきます。
そんな風にフランスでは生活道具として欠かせないパニエ、私もマルシェに行く時にはもちろん、

インテリア雑貨として、家の中でも使っています。

 

子供用の小さなパニエは、ハンドルにギンガムチェックの布が巻かれているもの。
お母さんが手縫いして、後からカスタマイズしたと思われるハンドメイド。
お人形の着せ替え服を入れたり、おままごとに使っていたのでしょうか?
蚤の市で2個セットで購入して以来、サングラス入れとして活躍中。
もう一点、カラフルなポンポン付きは、モロッコ製。
モロッコでは定番のポンポンが小さなパニエに色とりどりに縫い付けられています。
これは、ドアノブに掛けて、ドアの開閉時に、ポンポンがゆらゆら揺れて動くのがなんだか涼し気でお気に入りです。

 

通気性に優れ、丈夫で軽いパニエ。
カンカユリィと呼ばれる日常雑貨がなんでも揃うお店の軒下には、南仏産の大小たくさんのパニエが、

天井から吊るされて売られています。
カンカイユリィの前を通るたび、いつの日か、このパニエの中にはいろいろな食べ物と一緒にみんなの笑顔がいっぱい詰め込まれるのかしら?と、一人思っては、ささやかな幸せ気分に浸っています。

Column by 鈴木ひろこ/Suzuki Hiroko
スタイリスト・ジャーナリスト
パリの街をお散歩しながら、モード、人、もの
店などいろいろなカワイイ!を見つけるのが趣味