-003.L'Assiette Blanche

平皿、小皿、スープ皿にサラダボール、そしてマグカップ...。
気がついたら、たくさんの白い食器に囲まれて暮らしています。
出会いは、パリ生活スタート時からの趣味である蚤の市やブロカント巡り。

『どんなお料理にも合う、シンプルなお皿なら使い回し出来そうー』
住み始めた頃は、そんなにたくさんのものを揃えられなかったので、大好きな食器も極力少なめに、

とケチな考えから興味をもったのがきっかけ。
だけど、いろいろと見て回るうちに、一枚ずつ表情の違う白の食器の魅力に取り憑かれてしまい、

今ではちょっとしたコレクター並みに増え続けてしまいました。

お皿をひっくり返した裏側には、窯元により一枚づつ違う刻印が押されています。
船や杯、王冠のモチーフもの、またはシンプルに窯元の名前だけが記されたものなど。
同じメーカーでも時代によって刻印の色や柄が異なるので、これをみれば、いつの時代のどこのメーカーなのかを識ることが出来ます。

陶器のはじまりは17世紀から。土と水が豊なフランスの各地で窯元ができ、地場産業として栄えてきました。
当時は貴族など裕福層に愛されてきた高級品で、ヴェルサイユ宮殿の王家にも献上していたという歴史ある窯元は現在でも健在。
コンディションの良いものが、今でも蚤の市で比較的安値で出会えるのもパリの面白さです。
蚤の市の店主から、時代背景や窯元の由来、歴史など聞いてみる。
そんな時間も楽しくてすっかり白い食器のファンになってしまいました。

柔らかいクリームに近い白、青みが強くて透明感のある白、ひとくちに白と言ってもさまざまな色彩に溢れています。
アンティークのものは、陶器の中にお料理の色が残って斑点模様になっていたり、部分的に変色していたりするのもありますが、

それもご愛嬌。
人びとの暮らしの中で大切に大切に使われてきた証だから。

アンティークのみならず、現行ものも大好きです。お気に入りはアスティエ・ドゥ・ヴィラットとツェツェ。
アスティエの魅力はとにかく繊細なフォルムと美しい装飾。薄焼きですが、意外と丈夫なのでますますファンになっています。
パリ市内の工房で手焼きされる食器は、同じお皿でもちょっとずつ表情が違うところがカワイイ!
値段が張るのでたくさん買えないですが、時々お店をのぞいては、新作のチェックをしています。
ツェツェは、無骨な形状のカフェオレボールを昔から愛用していて、数年前の引っ越しを機に、大皿も買い足しました。
これは、フツーツ入れとして使っています。

触れると柔らかな土の感触が残っている陶器の食器には、眺めているだけでも温もりを感じられて、気分が和みます。
温かいスープを入れてもいいし、トマトやセロリなど野菜の美しい色を引き立ててくれるのも嬉しい。
どんなお料理も、一層美味しそうに見せてくれるのも、白の食器の魅力です。

Column by 鈴木ひろこ/Suzuki Hiroko
スタイリスト・ジャーナリスト
パリの街をお散歩しながら、モード、人、もの
店などいろいろなカワイイ!を見つけるのが趣味