-003.パンケーキと南京錠、そして。(前半)

沖縄、イクメン、子供、子育て、公園、砂浜
ビーチそばの公園は地面も白い砂。走り回る娘。ころんでもいたくないかな

沖縄&湘南別居生活をするにあたり、じつはじいちゃん、ばあちゃんたちにもいろいろなサポートをしいもらっている。

感謝の極みである。ありがとうございます。うちの親はじいちゃん80歳、ばあちゃん70歳を超えているが、心配してすぐさま沖縄に飛び孫とママの顔を見に行った。義父は自家農園でつくった野菜を送ってきてくれる。妻の母上に至っては、我が家2名の引っ越しとともに、沖縄に移住してくれたほどである。が、狭い部屋での3代生活。数ヶ月後、東京にお戻りになられた。ママと義母の間に何があったかは知らない(ホントは少し知っている)。だがそこは親子の関係の話であり、あえて何もいわなかった。そうして沖縄の家は、嫁と娘のふたりで新スタートを切ったのである。

海、沖縄、子育て、単身赴任、砂浜、岩場
沖縄の人にいわせると「もっときれいな海いっぱいあるさ〜」。スミマセン。。。

ちょうど、義母が帰京する準備をしていた頃だろう。ちょっとした事件が起きた。朝早くベランダでがさごそ音がするので見てみると洗濯機の上に、なぜかパンケーキが置かれていたという。義母はチラリとであるが、空のコンビニ袋をぶらさげた人がアパートの敷地から出ていく後ろ姿を見ていた。だが、それがパンケーキとは結びつくはずもない。ママからその話を聞いたが、子どものいたずらだろうと思っていた。
そして、次の知らせにはかなり衝撃を受けた。アパートの外に設置してあるポスト(よく並んでいるあれ)に、大きな南京錠が掛けられていたというのである。ほかのお宅のポストには異常はなかった。こうなると完全に狙いうちの犯罪の可能性が高まるではないか。するとミステリー好きのパパの頭の中に、巨大な妄想が渦巻いたのであった。パンケーキである。これは南京錠と関係があるに違いない。パンケーキを調べていくと、飛行機が着陸に失敗し、パンケーキのように潰れることを指すことに行き着いた。マジっすか。そして南京錠。パリのセーヌ川にかかるポンデザール(芸術橋)でも、手すりの金網に恋人たちが南京錠をかけ、景観破壊で問題になっているアレである。そう、南京錠は永遠の愛の証である。こうなると迷探偵はさらに迷宮へとはまっていった。男? 潰す? 狙い打ち? もう、沖縄の家のことが心配で堪らなくなったものである。ママは「考えすぎよ」というが、迷探偵の野生の勘が言っている。「ヤバいせ、これは」。そして、すぐ警察に届けるよう助言をした。案の定、警察はすぐに行動を起こしてくれた。現場視察、アパート全戸への注意勧告、見回りなどなど。
そして帰京する寸前の義母が、今度は恐怖を味わうことになる。一人で部屋にいたとき、突然玄関のドアを誰かが金属のようなものでこじ開けようとする音が聞こえたという。音が消え、そっとカーテンの影から外をみると、以前に見たのと似た人の後ろ姿を見たという。もうこうなると、何者かがその部屋にようがあるとしか思えない。心配は胃に鉛を入れてくれた。

「つかまえたわよ!」。ママは電話口で威勢よくいった。なんでも敷地内の駐車場で買い物の荷物を降ろそうとしていたところ、ある人が車の横を通り過ぎ、家の前で中の様子を窺っていたという。声をかけ「何かご用ですか」と聞いたところ、あやふやな返事でパンケーキの話などをし出したという。あとから聞いたところその人は警察で、しばらく空き部屋になっていたと思っており、手紙が取られないように親切心で南京錠をしたと話したらしい。パンケーキはあまっていたので置いたそうだ。それで一応の解決をみた。それ以後も警察は見回りを定期的にしてくれているし、ご近所つきあいや連携した防犯意識も広がったと妻はいう。よかったよ、ふーっ。胃が軽くなった。だが義母の帰京後、そんな気丈なママを激しく揺さぶる事が起こるのであった。

 

column by 細村剛太郎/Hosomura Gotaro
アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどを放浪後、出版社にて雑誌・書籍編集者として勤務
退社後、フリーランスとしてメンズ雑誌、広告、ウェブマガジンなどで活動
十数年前、ユルい空気に誘われ東京から湘南に移住し、波と戯れる
家族の沖縄移住を機会に、いい年こいて某大学院文化科学研究科に在籍
新メディアを研究中
5歳の女の子のパパである