-012.Les objets drôle

大寒波が襲来した今年のヨーロッパ。パリも2週間ほど最高気温でも氷点下という厳しい寒さが続きました。
そんな時には、おしゃれ心などというものは完全に封印。ひたすら着込み、防寒に努め、体力を温存して暮らしていました。
長かった極寒の日々もようやく終わり、
最近、やっとパリにも春の美しい光りが差し込んできました。
土の中から顔を出すちいさな木の芽や、まだ枯れ木の中にふくらみ始めたばかりの花のつぼみを見つけると、
自然のパワーを感じて、心の中で大きくスキップ。
「わーい、春だぁー」とひとり、毎日毎日気分が上がります。
第二回目の小鳥のコラムの中で書いた「春の訪れを告げる鳥の声」も
数日前、夕暮れ時の散歩途中に偶然耳にしました。
立ち止まって、声の主を捜したのですが、鳥の姿は確認できないまま。
その美しいさえずりをうっとりと聞きながら、今年も春がきた喜びを噛み締めています。

早春生まれの私は、なんといっても四季の中で、この季節が一番好き。
動物や昆虫が活発に活動するのと同じ本能的感覚で、無条件に元気が出てきて、やたらと張り切ってしまう。
もちろん、みなさまも春を感じて幸せな気分になっていらっしゃると思いますが、私の場合は、その傾向がもっと強いと申しましょうか...
小さな子供みたいに道路をスキップしたり、大声で歌を歌いたくなる衝動を抑えながら、暮らしているんです(汗)

そんな精神年齢の低い私が、最近気に入っている浮かれ気分いっぱいのグッズをご紹介します。
ひとつは、ビニール製のくまのお人形。ちょっとバランスの悪い黄色のボディが愛嬌たっぷり!
身体を動かすたびに、黒目部分がくるくる回る仕組みになっているのも、なんだか懐かしいですよね。
これは蚤の市のがらくたの中から見つけました。
この黄色のくまと一緒に、同じシリーズの赤い犬が並んでいたのですが、そちらは一緒にいた友人が購入。
いつもはどちらかと言うと冷静でエレガントなそのお友達も大興奮。人って意外な一面があるものですね。
お互いにひと目惚れの末、2人同時に色違いで購入。
ホコリまみれのくまを家に持ち帰り洗ってみたら、あら、想像以上にかわいい!
コレクションしているアーティザンな手ふきガラスの花器の横に飾って、大人ガーリーなコーナーが完成しました。

もうひとつは、
ニット帽をかぶって、洋服がわりのポンポンを纏っているセルロイド人形つきの鉛筆です。
ペンの持ち手にはサテンのカラーリボンが巻かれていて、手の込んだもの。
オレンジと黒の2色があり、顔の表情や目の色も微妙に違っているんです。
これは、チェコの老舗文房具屋さんで偶然見つけて、持ち帰りました。
もったいないから一生使わない、と心に決め、仕事机のペン立てに並んでいます。
原稿書きやPC作業に追われ、あー、疲れた!という時、
ふとこのお人形と目が合うと、とっても癒される。そんな時、精神的に助けられている大切なものです。

子供っぽいオブジェでも、自分がリラックスできる、応援グッズとしてどんどん飾りたい。
場所やディスプレイの方法次第で、いつもの見慣れた空間が違ってみえます。
大掛かりな模様替えは大変だけれど、好きな雑貨を置くことで、インテリアのイメージチェンジができたら、楽しいですよね。
春の到来とともに、ささやかな(くだらない?)かわいいオブジェに囲まれて、
ますますうきうき気分が高まっている今日この頃です。

Column by 鈴木ひろこ/Hiroko Suzuki
スタイリスト・ジャーナリスト
パリの街をお散歩しながら、モード、人、もの
店などいろいろなカワイイ!を見つけるのが趣味

著書に[フレンチシャビーなインテリア][大人スウィートなフレンチ・インテリア]ともにグラフィック社