-009.その痛みは誰のもの?★第8週目

「親が心を痛める」という状況を身をもって知ったのは、やはり自分が親になってからである。

あの時、親がどのような顔をして自分を見ていたのかは覚えていても、その時の親が何を考えてたかを知るのはずっと後のことだ。

子供は親に「ダメよ」と言われたことを敢えてやる。確実にそれは失敗して、痛い目をみて、学習をすることになるのだから、むしろ言わないでおいたら・・と思うこともしばしばだが、言わないでいたらもっと酷いことになるかもしれないからやっぱり言う。するとそれに反抗してやる・・という繰り返しなのだ。自分がそうだったし、自分の子供もそうだし、貴方の子供もきっとそうなのだ。

 

子供が痛い思いをしないように、失敗して悔しい思いをしないように、親は気を配り、気をつけ、指摘をしてあげるが、ことごとくそれは子供によって反故にされる。そして、そう、その時なのだ「親が心を痛める」のは。子供はその顔を見て"そら見たことか"と思われてるような気持ちになり「屈辱的だ」と感じる。しかし、親は子供を責めてるのではない。「貴方が傷つかないように、痛みを感じずに済むようにしたかったのに、それを為し得なかった」という悔恨の念の表情だ。それは、まるでギリシャ神話に登場する悲劇の予言者カサンドラの表情そのものだ。彼女は正しい未来を、来る悲劇を予知する能力を与えられるのだが、「誰もそれを信じない」という呪いもかけられてしまう。その悲劇を正しく予知していたカサンドラは、トロイの木馬が城内に運び込まれたとき、とてつもなく「心を痛めた」に違いないのだ。

 

息子はこうして反抗心に燃えながら、学習意欲に萌えながら、次々に難解であろう柵をクリアしていく。大人が10年かけて修得することを、幼児は1か月で修得してしまう。Alphabet letter を難なく2歳までに修得した息子は、今ひらがなの修得に萌え萌えだ。食べているものの名前を「と・ま・と」などと箸で文字を指し示しながらご飯を食べている。面白いから父が「カマキリはどう?」と聞けば、「Mantis の か、Mammy の ま、Giraffe の き、Squirrel の り! I got it !!」という具合に、英語で喋りながらひらがなを指し示すという驚くべき芸まで見せてくれる。しかし、こうした学習意欲への萌え萌えと同時に、親への反抗心にも燃えている息子は、スーパーで「走っちゃダメ」という制止を振り切って猛ダッシュし、止まれず、転倒し、母のショッピングカートに顔から突っ込んだ。そう、まるでディズニーの Cartoon のようにだ。息子のアゴは猛烈な衝突で、無惨にも、打撲で晴れ上がり、顔が変形してしまった。帰ってきて、父の顔を見るなり泣き始めた息子を抱いて、私はとても心を痛めた顔をしていた筈だ。

君の身体の痛みは、私たちの心の痛みだ。願わくば小さな痛みで大きな学びが得られますように。

 

Column by LIGHTWOOD/ライトウッド
IT 業界の会社を経営しつつ、現在3才になったばかりの息子の父で

どんな事でも創造する楽しさを教えたいと奮闘中

なるべくデジタル玩具から遠ざけたいと考える父と
父の寝てる間にiPhoneを使いこなすデジタル・ネイティブな3才の息子との闘いが日々続いている